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不動産活用コラム
子どもにとって、親が年を取っていくといろいろな心配事が増えていきます。
体力の衰えが不安になったり、認知症などの病気が心配になったりという人も少なくないでしょう。
さらに、親が老人ホームなどの施設に入る時にも、いろいろ考える場面が出てくることも忘れてはなりません。
親が住まなくなった後、実家をどうしたらいいのかというのも悩ましい問題です。
何もしないで空き家にしておくのか、実家を売るのかをどのように判断したらよいのでしょうか。
早めに実家を売るのは多くのメリットがありますが、売却するにはいくつか気をつけるべきことがあります。
今回は、実家を売却すべきか、空き家にすべきかの考え方と注意点を紹介します。
空き家にしておいた場合、売却する場合、それぞれの課題とは?
老人ホームに入るにはお金がかかるもの
どんな施設に入るかによってかかるお金は変わってきますが、入居一時金だけで数百万もかかるところもあります。
※LIFULL介護の有料老人ホームデータより(2022年7月)
上記の料金表を見ると、有料老人ホームの場合は月額費用に関してはおよそ20万円程度と見積もっておけば良いとわかります。
年間では200万以上かかる計算です。
このように決して安くはない金額を、どのように捻出すればいいのでしょうか?
有料老人ホームの費用をお金を親が負担するのか、子どもが負担するのかという問題もあります。
空き家は維持管理にお金がかかる
実家に誰も住まないのならば何もせずに空き家のままにしておきたい、
あるいはどうしたらいいのか考える時間や余裕も持てないというケースもあるでしょう。
しかし、空き家を放置してしまうと空き巣や放火などの犯罪や、カビや汚れ、虫などの衛生面の心配も出てきます。
防犯や衛生管理のためには警備会社の利用や清掃など、維持管理のためのお金もかかるのです。
また、誰も住んでいない状態でも、固定資産税や火災保険などの負担が続くことも忘れてはなりません。
空き家のままだと節税のチャンスを逃してしまう
では、実家を売るのに適切なタイミングはあるのでしょうか?
それは、早めに越したことはありません。
というのも、親が施設に入ることになったものの、
早めに売る決断をしないでいると税金を節約するチャンスを逃してしまうからです。
親にとっては、住み慣れた我が家を手放すことには抵抗感や寂しさもあるでしょう。
長年大きな苦労をしてようやく手に入れたものでしょうからなおさらですね。
しかし、売る場合は一定の期間内に売らないと、損をしてしまう可能性もあるのです。
また、親が入居して実家が空き家になり、施設入居後長期間が経過し、
そのまま亡くなってしまうというケースもあります。
このようなケースでも、損をしてしまう可能性があります。
子どもは実家を売れない・・・ならどうする?
実家は、子どもが簡単に売れるわけではありません。親だけが、その権利を持っています。
まず、親が売却に賛成する必要があります。
次に代理人を決め、委任状を書き、代理人になった人が買い手と契約を結びます。
委任状には、物件の詳しい内容や、誰から誰に委任するのかを明記する必要があります。
この時、親からは何をどこまで任せてもらえるのかなど、対応できる権限の範囲をしっかり話し合っておく必要があります。
実家を売却するメリットを知っておこう
放置して空き家にする場合、実家を売る場合、それぞれ課題があることが分かりました。
では、実家を売る場合のメリットとは何でしょうか? 以下にまとめます。
実家の売却で老人ホームに入居できる
老人ホームなどの施設に入居する際に発生する費用を、実家を売ることでまかなうことができます。
もしこちらの希望に近い金額で売ることができれば、より多くのお金を工面できます。
空き家を持つさまざまなリスク、心配が減る
空き家を持ち続けることはさまざまなデメリットがあるものです。
年月が経つと建物は老朽化、劣化していくので、維持管理の負担が増えていくのに資産価値は下落していってしまいます。
また、もし実家が「特定空家」に指定されてしまうと、固定資産税の優遇措置が
適用されなくなるというリスクもあります。
2015年5月2日に施行された「空家等対策特別措置法」により、以下のような状態にあると
「特定空家」として指定されることになりました。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
指定される要因となった不適切な箇所を改善すれば、「特定空家」は解除されます。
実家を管理する義務を手放すことができれば、さまざまなリスク、税金の心配を軽減させることができ、余計な心配が減ります。
気持ちに余裕ができ、親への接し方やケアにも好影響を及ぼすかもしれません。
実家の売却は3,000万円以内なら特別控除で節税に
実家を売って利益が出ると、出た利益に税金がかかります。
しかし、例えば4,000万円で購入した家を5,000万円で売れれば1,000万円の利益ですが、
利益が3,000万円以内であれば、税金がかかりません。
家を売って、これだけの利益が出ることはまれですが、節税の手段として頭に入れておきましょう。
相続空き家の3,000万円特別控除で税金が安くなる
親から実家を相続した場合、相続した日から約3年になる日が属する年の12月末までに売れば、
税金が安くなるという制度もあります。
いくつかの適用条件はありますが、早めの売却が有利なことがお分かり頂けるでしょう。
問題を先送りせず、早めの対策を
もし親が病気や認知症になってしまった場合、実家をどうするのかの話し合い自体が難しくなります。
仕事や家庭での負担に加え、親の問題までもがのしかかってくると、大きなストレスになるかもしれません。
いずれは考える必要のある、実家をどうするのかの問題を先送りしないで、
気づいた時点で早めに話し合いをしておくと、家族皆が納得した形を取りやすいでしょう。
実家の売却にあたって気をつけたい点は?
売却に関して、押さえておきたい注意点もあるので説明します。
成年後見制度の注意点
実家は子どもの独断では売れないと前述しました。
しかし、認知症などの病気で正常な判断能力を欠いてしまった人が困らないよう支援する制度があります。
こちらの「成年後見制度」を使うことも可能で、「自分が法定後見人になる」
という意思を家庭裁判所に申し立て、認められる必要があります。
ただ、必ずしも子どもが後見人を担えるというわけではなく、弁護士などが選ばれることもあります。
子どもが後見人に認められて実家を売る場合は、家庭裁判所から許可をもらう必要があります。
もし親が実家の売却に同意してくれない場合は?
親が売却に同意してくれないという可能性もあります。
すると、売却によって得られると期待していたお金が得られなくなってしまうのではと心配になるというケースもあるでしょう。
その場合は、次の2つの方法を検討するとよいでしょう。
1.リバースモーゲージを利用する
リバースモーゲージとは、実家を担保(返済できなかった場合に渡すもの)にして銀行からお金を借りるシステムです。
親が亡くなった時に売ることで返済ができます。
すぐに実家を売却しなくてもお金が入るため、親が売ることに同意してくれずにお金が入らなくて困るということがなくなり、
介護や医療費に回すお金を作れる点では便利です。
ただ、リバースモーゲージは無限に借りられるわけではありませんし、
売った方がより多く利益が出ることが多い点には注意が必要です。
2.任意後見制度を利用する
親が元気で判断力があるうちに、あらかじめ本人自らが選んだ人(任意後見人)
に代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
親としては自分の子どもを任意後見人にすることができるので安心ですし、
子どもとしても他人に任せるよりはやりやすいでしょう。
任意後見制度では、契約書を公正証書で作成する必要があり、費用が発生することは認識しておきましょう。
まとめ
実家を売却すべきかどうかの問題は、親が家を手放すことを反対するなど、ハードルがあるものです。
空き家にはリスクもあるため、何も決めずに時間が経過してしまうと、
節税に関しても不利になることがお分かり頂けたかと思います。
早い段階で家族で話し合いを行い、親が施設に入ることが決まったら早めに実家を売ることを検討してみましょう。
実家の空き家をどうするか悩んだら、よろず屋不動産にお気軽にご相談ください。