• 不動産活用のこと
  • 2024.05.28
相続放棄をした不動産はどうなる?管理義務の注意点などについて

近年、相続問題において相続放棄が増加しています。相続放棄とは、亡くなった方の財産や借金を引き継がないことを意味します。
しかし、相続放棄した場合、その家や土地にはどのような影響があるのでしょうか?
また、管理義務の有無や注意点は何でしょうか?
今回のコラムでは、相続放棄に焦点を当て、詳細に解説していきます。

 

相続放棄とは?

相続放棄は、法定相続人が亡くなった方の財産や借金を受け継がないことを決定する行為です。
相続放棄をすることで、相続人は相続財産に関する権利や義務を放棄し、一切の責任を免れることができます。
これにより、負債を背負いたくない場合や、相続に対する意思がない場合に利用されることがあります。

 

相続放棄した場合の不動産の処理

相続放棄が行われた場合、その家や土地はどうなるのでしょうか。
まず、相続放棄を行った者は、相続財産に対する権利と義務を喪失します。これにより、不動産も含めた相続財産は、法定相続人や遺言に基づいて再分割されることになります。

それでは、相続人全員が相続放棄してしまうと家はどうなるのでしょうか。
法定相続人全員が相続放棄すると、相続財産である不動産は国のものになります。

ただし、不動産を国に継承するためには、弁護士などを相続財産清算人とするための申し立てをおこない、
相続人がいないことを法的に証明しなければなりません。


管理義務の有無

相続放棄に伴い、不動産の所有権が他者に移転する場合、管理義務についても考慮する必要があります。
一般的に、相続放棄した者は、不動産に対する管理義務を負いません。
管理義務は所有者に課せられるものであり、相続放棄により所有権が変わるため、新たな所有者が管理義務を負うことになります。

ただし、不動産によっては、その状態や利用目的により異なる管理義務が発生することがあります。
例えば、空き家や放置された建物が周囲に悪影響を与える場合、地方自治体が条例に基づき所有者に対して管理を求めることがあります。その際、相続放棄した者に対しても一定の責任が問われる可能性があります。


2023年4月民法改正 相続放棄の管理義務対象者が明確に

これまでの法律では、相続放棄後の管理義務の対象者が少し曖昧な部分もあり、2023年4月から施行された改正民法により、責任者が明確にされました。

 

❝ 民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

 

これまでは対象となる相続人全員が相続放棄した場合、最後に放棄した相続人が遺産を管理しなければなりませんでした。しかし、改正民法が施行し、「現に占有している」実態がなかった相続人に、管理責任が移ることはなくなりました。

「現に占有」とは「事実上、支配や管理をしている」状態のことを指します。たとえば、被相続人の自宅で一緒に暮らしていた相続人は、相続財産である自宅の不動産を「現に占有」していたと言えるため、相続放棄後も管理しなければなりません。

更に民法改正に伴い、これまで「管理義務」と称していた言葉も「保存義務」へ変更となりました。これは相続の放棄をした者が相続財産の管理または処分する権限や義務を負わないことを踏まえてた経緯があります。

称し方は変われど、「管理義務」と「保存義務」の中身に実質的な違いはほとんどありませんので、言葉が変わっただけと考えてよいでしょう。

 

相続放棄の注意点や保存義務のリスク

相続放棄にはいくつかの注意点があります。

まず第一に、相続放棄を行う際には、公正証書や裁判所を通じた手続きが必要です。不動産の場合、登記簿上の権利関係が変更されない限り、相続放棄が完了しないため、適切な手続きを行うことが重要です。

また、相続放棄により不動産が他の相続人に分割される場合、遺産分割協議や裁判所の介入が必要な場合があります。円滑な手続きを行うためには、相続に詳しい人間の法的アドバイスを受けることも重要です。


相続放棄した後に適切に管理しなかった場合のリスク

相続放棄をしたとしても「現に占有している」者には保存義務が残ります。その場合しっかりと不動産を管理していなかったら、どのようなリスクが及ぶのでしょうか。

損害賠償を請求される

管理不足により資産が毀損されると、債権者が債権回収できなくなったり受遺者が遺産をもらえなくなったりする可能性があります。その場合、相続放棄者の保存責任として、損害賠償請求されるリスクが発生します。

また、相続放棄した家が倒壊して誰かにケガをさせた場合などには、損害賠償請求される可能性もあります。

空き家問題の事件に関わってしまう

近年増加している空き家をアジトにした犯罪集団や薬物栽培の場所に使われることなど、思いもよらない事件に関わってしまうリスクもあります。また放火されたりすると、保存義務者である相続放棄者が事件に巻き込まれる可能性もあります。

相続放棄の効果がなくなることも

「現に占有している」者が相続放棄した場合、保存義務があるからといって、勝手に遺産を処分してはなりません。

処分すると「法定単純承認」(プラスの財産もマイナスの財産も相続すること)が成立して相続放棄の効果がなくなってしまいます。そうなるとすべての遺産を相続せざるを得なくなり、借金が遺された場合などには大変な不利益を受ける可能性が発生します。

最後に、相続放棄によって空き地や空き家が発生する場合、地域社会や行政と協力して、これらの不動産を有効活用する方法を模索することも重要です。
地域振興や住宅政策に貢献する形で不動産を再利用することで、社会全体の利益にもつながります。

まとめ

相続放棄は、相続財産を受け継がない選択肢の一つですが、その影響は不動産にも及びます。
相続放棄によって発生する不動産の処理や管理義務、そして注意点について正確な理解と適切な対応が求められます。
法的なアドバイスや相続問題に精通した専門家の協力を得つつ、円滑な手続きと社会への貢献を考えることが大切です。

不動産相続についてのお悩みや、相続放棄について検討している方がいらっしゃいましたら、
専門家であるよろず屋不動産までお気軽にご相談ください。