• 税金・節税のこと
  • 2024.05.21
相続登記の義務化が2024年4月1日から実施! 概要や注意点について解説

2024年(令和6年)4月より、相続登記の義務化が施行されます。
今までは相続で取得した不動産の相続登記は任意でした。
今後は、「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内」に不動産の名義変更登記をしなければなりません。

正当な理由がなく登録申請を怠り、これに違反すると10万円以下の過料の対象となります。
これは、遺言などの遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により所有権を取得した者も同様です。

またこの法律は過去の相続も義務化の対象になるので注意が必要です。

 

このように相続登記義務化の影響は大きいと予想される一方、法務省が2022年7月に実施した調査では、なんと6割を超える人々が相続登記義務化についてよく知らないことが判明しました。このまま知らずに相続登記を怠ると、将来的に子どもや孫世代が相続する際に思わぬ負担やトラブルを招きかねません。

そこで今回は、「相続登記の義務化」について詳しく解説していきます。

 

相続登記義務化について、6割を超える人がまだ知らない!

 

年も明け、いよいよ今年2024年(令和6年)4月から施行される「相続登記の義務化」。

これにより、これまでの相続のあり方や管理について見直されるなど、大きな影響が予想されましたが、法務省が発表した「相続登記の義務化について」の調査結果は以下の通りでした。

 

「全く知らない」・・・43.1%

「聞いたことはあるがよく知らない」・・・23.3%

 

驚くことに、相続登記の義務化 を 「全く知らない」「よく知らない」 と答えた人は、約 66 %で3人に2人は認知していないという結果となりました。

さらに、今回の調査結果で気になるのが「知らない」と回答した年齢層です。

 

「聞いたことがあるが、よく知らない」「全く知らない」と答えた割合

40代・・・75%

50代・・・72%

 

特に相続に関わりが多い年代である40代・50代が高い比率となっています。
これにより、相続登記について危機意識がまだまだ低いという現実がわかる調査結果となっています。

※法務省:相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度等調査調査結果の概要より引用

 

なぜ相続登記が義務化された?

 

まず、相続登記とは相続により不動産を取得した時に、不動産名義を被相続人から相続人へ不動産名義を変更する一連の手続きのことです。この相続登記は、いままで登記するかしないかは任意であり、その判断は相続人の判断に委ねられていました。

 

その結果、相続する建物を住居として使用する場合や、賃貸物件として運用する場合、また売却する場合はともかく、価値を生まない土地などの場合は、手続きの煩雑さや登記費用の問題、相続税や固定資産税から逃れることを目的として、相続登記を放棄してしまう事例が全国で多発してしまいました。

 

相続登記が行われないまま所有者が特定できない空き家や空き地が増えてしまうと、適切に処分できず、不動産の取引をはじめ都市開発の妨げにもなります。
この所有者不明土地が近年社会問題となっており、事態の解消に向けて不動産の所有者を明確にする相続登記の義務化が決定されました。

 

所有者の確認が取れない土地の割合は約2割

 

国土交通省が2016年にまとめた資料によると、不動産登記簿において所有者の所在が確認できない土地の割合は20.1%に及ぶと報告されています。この20%の内訳として、相続が理由となって所有権移転の未登記とされている土地は、およそ67%にも及びます。

こうした深刻な状況の問題解消を目指して、国は2020年に土地基本法を改正、土地所有者の責務を明確にしました。

それに伴い、関連する民法と不動産登記法等の法律が改正され、これまで義務のなかった不動産の相続登記が2024年4月から義務化されることになったのです。

 

相続登記を先延ばしにするリスク

 

相続により取得した不動産を相続登記しないままで放置をしていると、実は過料以外にも様々なリスクを招いてしまいます。

 

不動産の売却・担保設定ができない

相続登記を怠ると、被相続人の名義のまま不動産を売ったり、担保を設定したりできなくなります。仮に買い手が現れて、相続人と買い手との間で不動産の売買契約が結ばれても、登記上の所有者である被相続人から買い手に所有権の移転登記ができません。

不動産売買の取引を完了させるためには、相続登記をおこない、不動産の所有権を被相続人から相続人に移転させる必要があります。

 

相続の権利関係が複雑になり、子や孫世代への負担増も

相続登記を怠り、相続した不動産を放置したまま世代交代が進むと、故人の遺産分配を相続人全員で協議する、遺産分割協議が難航してしまいます。時間経過とともに新たな相続が発生し、相続関係者が増えて複雑化することで遺産分割協議がより困難になるため、できるだけ早く進めるべきといえるでしょう。

また相続登記に時間がかかると、相続した不動産を売却したいと思っても、すぐに売ることができず、金銭的(経済的)な不利益を被ることもあり得ます。

こうして相続登記の義務を怠ると、当人だけではなく子や孫の代にも思わぬ負担・不利益を生じる可能性に注意が必要です。

 

「代位登記」されてしまう

代位登録とは、債権者が自己の債権を保全するため、民法第423条の規定により、債務者の有する登記申請権を代位行使して登記申請することを指します。

例えば、複数いる相続人の中に債務者がいて借金を返済しないと不動産を差し押さえされてしまう可能性があります。債権者は自らの債権を保全するため、相続登記していない不動産を相続人に代わり「代位登録」することで、不動産の差し押さえができるのです。

このように、しかるべきタイミングで相続登記を行わないと、本来相続できる不動産を「代位登録」されてしまうリスクもあります。

 

相続した不動産が差し押さえられる

相続登記をしていない状態だと、仮に遺産分割協議で不動産の取得が可能になっていても他人に差し押さえられてしまう可能性もあります。共同相続人が抱える借金により、債権者に不動産を差し押さえられてしまうことがあります。

 

例えば相続人が3人おり、そのうち1人が借金を抱えていたとする場合、債権者には、借金を抱える相続人の法定相続分を相続登記し、差押登記をする権利があります。借金を抱える相続人が不動産を取得せずとも、差押登記は取り消されません。

 

相続人の認知症発症のリスク

相続登記せずそのまま放置していれば、いずれ相続人も高齢化していきます。相続人が高齢化すれば、認知症発症のリスクも考慮する必要があるでしょう。

相続人が認知症を発症し相続の判断能力がなくなれば、遺産分割協議はすべて無効になり、相続登記もできなくなってしまいます。

成人後見人をつければその限りではありませんが、家族以外の専門家が後見人として選任されるケースが近年多くなっています。そうなると、相続の手続きは手間や時間もかかり、思うように遺産相続協議は進まない可能性もあります。

 

相続登記はいつまでにすべきか

 

現段階で、相続登記には法律上の期限は設定されていません。しかし、2024年4月1日からは、3年以内の相続登記が義務化されるようになります。

2024年4月1日から有効となる相続登記の期限は、不動産所有者の相続人だと認識した日から3年間です。仮に2024年4月1日に相続登記の義務が発生した場合は、2027年3月31日までに相続登記を終える必要があります。

また、放置していた過去の相続登記も対象となるため、2024年4月1日からはどんな理由があっても相続登記を怠ることは厳禁です。
期限直前まで待つと書類の取得が間に合わない可能性が高いので、余裕を持って準備することをおすすめします。

 

まとめ

 

今回はいよいよ目前に迫った「相続登記義務化」の概要や先延ばしにすることのリスクについて解説しました。

相続登記の義務化の問題は相続人である当事者だけの問題ではなく、ひいては子・孫の代まで負担が増してしまう場合があることもよく考えなければなりません。

とはいえ、いままで相続登記は任意であり、長年放置している方も多いかと思います。そのため、今回の相続登記の義務化に伴い大変な労力がかかる可能性もあるでしょう。

本記事で紹介した相続登記の内容をご参考いただき、スムーズに進め、リスクを回避するためにまずは早めの準備と対策をおすすめします。

不動産相続の登記やお悩みのことは、お気軽によろず屋不動産までご相談ください。