- COLUMN
不動産活用コラム
- 空室対策のこと
- 2024.10.25
未活用の資産を有効活用する方法として、宿泊施設、特に民泊への転用が注目を集めています。観光需要の高まりや、旅行者のニーズの多様化に伴い、ユニークな宿泊体験を提供できる民泊は、新たなビジネスチャンスとして期待されています。
空き家になっている古い日本家屋や古民家をリノベーションし、魅力的な宿泊施設にできるかもしれません。
ただし、空き家を宿泊施設として運営するには、法律や規制にのっとった準備、そしてさまざまな注意点に留意して進める必要があります。
今回は、空き家を宿泊施設、特に民泊として活用したいと考えている方々に向けて、その準備プロセスと注意点について詳しく解説していきます。
空き家を宿泊施設にする3つの方法
空き家を宿泊施設として活用する際、主に3つの方法があります。それぞれの特徴と適用条件を理解することが、成功への第一歩となります。
民泊(住宅宿泊事業法)
2018年6月に施行された住宅宿泊事業法、通称「民泊新法」に基づく方法です。この法律により、一般の住宅でも年間180日を上限として宿泊サービスを提供することが可能になりました。比較的参入障壁が低く、個人でも始めやすいのが特徴です。ただし、営業日数の制限や、地域によっては条例による規制があることに注意が必要です。
特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)
国家戦略特別区域内で認められる民泊形態です。東京都大田区、千葉市、新潟市、北九州市、大阪府、大阪市、八尾市、寝屋川市といった指定された地域で取り組まれています。住宅宿泊事業法による民泊と比べて、年間の営業日数制限がないことが大きな特徴です。ただし、最低滞在期間が2泊3日以上、最低床面積などの条件があります。
旅館業法
従来からある旅館業法に基づく方法です。ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4つの分類がありますが、空き家活用の文脈では主に簡易宿所営業が選択されることが多いでしょう。年間の営業日数制限はなく、1泊からの宿泊も可能です。ただし、設備基準や衛生管理基準が他の2つの方法と比べて厳しく、初期投資や運営コストが高くなる傾向があります。
これら3つの方法のうち、どれを選択するかは、物件の立地、想定する客層、運営規模、投資可能額などを総合的に考慮して決定する必要があります。特に初めて宿泊事業に参入する方の場合、比較的ハードルの低い住宅宿泊事業法に基づく民泊から始めるケースが多いようです。
空き家を民泊の施設にする準備や手順とは?
今回は、3つの宿泊施設の方法のうち、比較的取り組みやすい民泊について解説していきます。
空き家を民泊施設として活用するためには、計画的以下に、主な準備や手順を詳しく解説していきます。
要件の確認
民泊を始める前に、その物件が立地する自治体の条例や規制を確認します。住宅宿泊事業法に基づく民泊であっても、地域によっては営業可能な期間や曜日に制限がある場合があります。マンションやアパートの場合は、管理規約も確認が必要です。
民泊を行う住宅は、事業用の不動産でなく「住宅」であることが要件で、かつ「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」の4つの設備が設けられている必要があります。これらの設備は、届出する住宅に設ける必要があるので、最初に確認しておきます。
物件の設備確認とリノベーション
空き家の現状を詳細に調査し、必要な改修箇所を洗い出します。水回りの設備、内装の状態などを確認します。宿泊者の快適性を考慮し、エアコンの設置やWi-Fi環境の整備なども計画に含めましょう。
必要な許認可の取得
住宅宿泊事業法に基づく民泊を始める場合、都道府県知事(または政令指定都市の市長)への届出が必要です。届出には、住宅の図面や設備の概要などを記載した書類の提出が求められます。
また、「消防法令適合通知書」などの消防法に基づく消防用設備等の設置が基本的に必要となります。届出方法は自治体によって異なるので確認しましょう。
運営システムへの登録
届出が受理されたら、民泊制度運営システムに登録します。観光庁が運営する民泊制度ポータルサイト内で使える事業者用のシステムです。
運営体制・集客方法の構築
予約管理、チェックイン・チェックアウト対応、清掃、メンテナンスなどの業務をどのように行うか計画します。自身で行うか、アウトソーシングするかを検討し、効率的な運営体制を構築します。
民泊予約サイトへの登録、自社ウェブサイトの作成、SNSの活用など、効果的な集客方法を計画します。ターゲットとする客層を明確にし、そのニーズに合わせた設備やサービスを検討します。
空き家を民泊の施設にする注意点とは?
空き家を民泊施設として活用する際には、以下の点に特に注意を払う必要があります。
改修内容によっては建築確認が必要
空き家のリノベーションを行う際は、工事の内容・地域によっては建築確認が必要なこともあります。建築物を増改築しようとするときに、建築計画が法令で定められた建築基準に適合しているかを確認するものです。
もし建築確認が必要になった場合、工事完了までの期間が長くなりますので、それも含めて計画に入れましょう。
180日ルールの運用の仕方を考える
民泊新法で届出を行う場合、1年間180日までが宿泊を受け入れられる日数です。
1年で180日を超えなければ、運営者の都合に合わせて運営ができます。どの程度の事業規模にするかを考えた上で、部屋数や最大宿泊人数を考えましょう。
民泊制度運営システムへ登録すると、180日の日数管理を行うこともできます。
近隣住民への配慮
民泊事業を円滑に進めるためには、近隣住民の理解と協力が不可欠です。事業計画や運営方針、騒音対策などについて丁寧に説明し、不安や懸念を払拭するよう努めましょう。状況に応じて近隣住民への個別訪問や説明会などを行い、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
宿泊者名簿の備え付けや定期報告
宿泊者名簿とは、民泊の利用者全員分の情報が記載された名簿です。名簿には氏名、住所、職業、宿泊日、国籍、旅券番号(日本に住所を持たない場合)の項目が記載されている必要があります。
民泊事業者は、宿泊者名簿を3年間は保存する義務がある点に注意してください。また、2ヶ月ごとに都道府県への定期報告が必要になりますので留意しておきましょう。
衛生管理の徹底
民泊は清潔で快適な環境、徹底した衛生管理が求められます。定期的な清掃はもちろん、寝具やタオルの洗濯、換気など、細やかな配慮が必要です。特に、感染症対策には十分な注意を払いましょう。
外国人宿泊者への配慮
特に外国人宿泊者を受け入れる場合、文化や習慣の違いに配慮することが大切です。必要事項を外国語の印刷物などで案内し、トラブルを未然に防ぐように対策しましょう。
集客の際のオンライン掲載の情報にも外国人への配慮をしておくと、予約成立につながるでしょう。
まとめ
今回は、空き家を宿泊施設にしたいと考えている方々に向けて、その準備プロセスや注意点について解説しました。
最もハードルが低いといわれる民泊でもさまざまなルールや注意点があることがお分かりいただけたかと思います。
専門的な細かい知識が必要な部分もあるため、空き家を宿泊施設に活用したいとお考えの場合は、できるだけ専門家の力を借りたいものです。
よろず家不動産は、空き家活用のプロフェッショナルとして数々のお悩みを解決してきました。空き家活用をお考えの方は、どんなことでもぜひ一度ご相談ください。